円高に対する、考え方が極端に分かれている。
一方に、「貿易立国の日本には、この円高は大打撃になる!、マイナスである!」
・・・・・これは日経新聞他 一般のメディアの報道で、今一斉に喧伝されている。
もう一方に「上記の考えは、事実無根の固定概念である」と主張する数少ない「識者」がいる。
・・・・・私が ここ5年ぐらい、関与先の経営者に配布し続けている「時事直言」の筆者
「増田俊男氏」である。
少し長いが、該当する「時事直言」NO604 <10/9/2付け>を全文紹介する。
1) 輸出企業の為替変動に対する耐久力
日本の輸出・入業者は、為替先物予約などで為替変動に対処しているので、変動
リスクはかなり無くなっている。「1円の円高は○○億円の差損」等は あまりにも、
単細胞的議論である。
2) 日本の主な輸出企業は、海外に子会社や支社を持ち、原材料や半製品は自社グルー
プ間取引を行っているので「為替リスク」は かなり吸収されている。
3) 15年以来、日本の国内企業物価は7.4%下落しているので、仮に今の為替レートが
1995年4月19日と同じ、1ドル79.75円であったとしても日本の国際輸出価格は
1995年より低いことになる。
その1995年以来の貿易相手国の通貨の変動率を加重した 実質実効為替レートは
現在1995年(79.75円)より30%安い計算になる。 つまり1ドル55.82円になっ
てもおかしくないという事であり、現在84ー85円は超円安である。
4) 日本は加工貿易を基盤とした、貿易立国との概念 がある。
しかしこれも過去の話である。
世界銀行のデータによると、2008年の輸出入のGDP(国内総生産)比 の全世界
平均が 52.5%に対し、日本はわずか31.5%でしかない。
世界190ヶ国中 最下位から7番目である。
日本が国際貿易国という概念は大間違い! 日本は貿易を通じての世界との
リンクは もっとも低い国である。
5) 1990年代のプラザ合意以来の「円高」で 日本の製造業は一貫して海外進出を展開
してきた。内閣府(2010年)の調査によると、海外で現地生産を行う企業の割合は
1990年度に40.3%であったのが、2009年には67.5%に増加している。
製造業全体の現地生産率は1990年の4.6%から2009年には17.8%である。
6) 円高は企業の海外進出を加速させ、雇用の空洞化をもたらすともいわれている。
これもナンセンスである。
かって、経済産業省の海外事業活動基本調査で2001年に270万人だった現地
法人の雇用が2003年に350万人だったことから、「雇用の輸出」という言葉が生ま
れたにすぎない。ごろあわせの誤解である。
同じ経済産業省の調査で2005年から2008年にかけての海外現地法人の雇用
数は 436万人から452万人に増えたが、同じ時期、日本の本社の雇用は394万
人増加している。
海外雇用増は 即 国内雇用増につながるのである。
7) 海外直接投資の「収益」が 日本の本社の経常収益に占める割合は24%にたっして
いる。(2009年)
日本企業の経常収益の2割前後は海外からの収益と考えていい。
8) 最近の経済のグローバル化に伴い、世界銀行はその指標で、GDPに替えて、GNP(
国民沿う所得)を使う。
海外収益を反映する日本のGNPは 95年いらいGDPを上回り2008年にはGDP
より4%も上回った。
日本のGDPのかい離幅は世界一である。
円高は、かい離率を広げ 収益を増やすから、それだけ配当に回る。
だから株価にプラスに働くのは当たり前である。
間違った「概念」が壊れるのは、来年の3月決算を見てからである。
Seeing is Believing (百聞は一見にしかず)
**************************************
氏の分析は、少しも軸がずれない。上記の論点は、彼が一貫して述べている内容だ。
今回は少し長い引用になったが、地に足がついた「経済分析」の出来る実践的経済人
<日本・米国を股に掛けるファンドマネージャー>として、「増田俊男」氏の論評を掲載した。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。