病気のアキ子
目があどけなく 俺をみあげている
フスマのそばのベットに
フトンに埋もれて
風邪を引いた 亜希子が寝ている
顔を近ずけると いつもと違う 湿った熱気が
俺の顔にかかってくる
「アキや どうだい」と俺はアキのちっちゃな指をくわえる
何か言いたくても
まだ 泣くことしかできないアキ
今日は目だけで 俺に訴える
顔を横に向け また 立てにして
口をヒョットコにしても アキは笑わない
ヒヨットコの 俺の唇を
指でつかもうとする
アキは いま病気と闘っている
百四十日目の亜希子が 闘っている
1970年9月 初めて風邪をひいた愛娘へ 徳島 基弘作
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。