インタビュー「領空侵犯」 10、3、8付け 日本経済新聞より
静岡大学 吉村 仁教授 (進化理論研究学者)と編集委員 滝 順一氏
~一人勝ちを生まない経済に~
Qーーー 適者生存の競争社会のあり方に異論があるとか?
「ダーウイン流の 適者生存は、環境に適応し、より多くの子孫を残した者を強者と考えます。
ただし、これは環境変動による生存の危機が起きないとの前提の下です。」
「生き物は 危機と遭遇し それを乗り切ることで進化してきました。人間社会も同じです。
環境変化による影響を受けにくくする為に、私たちの祖先は集団生活を始め、集落を作り
都市に発展し、文明を育ててきました。「協調」が社会の基本にあります。
文明の初期段階から、人間は生き延びる為に 皆が協調します。 しかし生存が既定のものと思うようになった現代では、自分さえ良ければいいという「自己利益」の最大化に走ります。結果は「滅亡」です。
Qーーー 今は危機の時代ですか?
「資源と環境の両面で 地球の有限性がはっきりしました。
過去にも森林破壊で文明が衰退するなど、地域的な危機はありましたが、産業革命を経て、
今 私たちが直面しているのは地球規模での有限性です。
地球温暖化対策を巡る 国際交渉は その一例です。
米国や中国などの大国が、自己利益の追求に走り交渉がまとまりません。
成長機会の奪い合いではなく、協調の方が持続的な成長が出来る筈です。
気候変動がもたらす大災害は 国家の存亡に繋がる危機であると認識する必要があります。
国際的な温暖化対策の枠組みは、抜け駆けを許すような仕組みではいけません。
Qーーー 世界経済のあり方にも注文がおありとか?
「人類にとって、もう一つの大きな環境変化は、経済活動のグローバル化です。
生産活動などの実体経済に必要な額を遙かに上回る資金が世界中を駆け回るようになりました。
こうしたマネーを運用する投資ファンドは利益の最大化を求め、企業に内部留保を多く持つ
ことを許しません。
これは、資本主義本来の精神を損なうと考えます。 健全な投資は長期の資金を提供し
企業の持続的な成長を可能にするものです。 今の過剰マネーは生産活動に寄与せず
むしろ企業から利益を奪い、長期的な成長を妨げているのでは無いでしょうか?
Qーーー 処方箋は?
「自己利益の最大化を目指したマネーゲームの果てが金融危機で 実体経済を傷つけて
しまいました。これは 明らかに行きすぎです。
短期的な資金の移動に課税して マネーの動きを抑えることが必要です。
多くの人が現在の資本主義の危機を認識すれば、賛同してくれると思います。
++++++++++++++++++++++++++
一般に 「進化」は「生存競争」の「勝者」と、単純に考えやすいので、今の社会風潮の「超・個人主義」に対する「反論」は無いものかと、数年前から 個人的には頭をひねっていた。
これまでの私の結論は 「人類社会の進歩・文明の発達は、人と人のつながり、社会関係の発達と共にあった」 とこれまでに「ブログ」にも書き、人にも話してきたので、考察する立場は違うが、同じような問題意識をお持ちの方がおられてかつ、帰着点が同じなので、すごく納得した。
人類の危機は、このままでは 宇宙規模の災害現象によるものでは無く 実は人類自身が作り出す可能性がある。
私は この原因が 人間の指導者階級の傲慢さにあると考えている。
本来 「協調」は、個人間でも、企業間でも、国家間でも必要である筈だが、今のままでは、人々は一層 孤立化し 「協調」より「競争」の激化の道に突き進んでいるのではないか?
人々を追い立てる「個人責任」という「言葉」の無慈悲な側面だけが、今の時代に際だっている。 今 生存基盤を保証されない所得の「若者」や「派遣切り」に直面した働き手は、将来に何も希望を持てないでいる。
まさに「希望格差社会」!!
「助け合い」の無い「人類・人間」は、この宇宙では そんなに強い存在では無いのでは?
一人一人がバラバラでは、やがて 小規模な災害現象にでさえ対応出来ず、まるで虫けらの
ように、押しつぶされ 吉村教授がいうように「滅亡への道」を歩むようになるのでは?
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。