産業カウンセリング誌 日本産業カウンセラー協会発行 2010、3月号(NO271)より
「診察の窓から」第1回 お茶の水医院 市川光洋医師 寄稿
現在 「もしドラ」によって、再度 注目を集めている アメリカの経済学者<P,F,ドラッカー>によって
「知識労働者」という概念は 世に知られた。
(もしドラ=もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら:岩崎夏海著)
彼の 【断絶の時代】は1968に出版され、その中で「知識の時代」の章は、知識経済・知識労働
・知識労働者の出現と社会の根本的な変化について述べている。
知識労働者とは、旧来は医師、弁護士、科学者、教師といった人々であったが、現在の精神科クリニックには新しいタイプの知識労働者の医療相談が増えている。
具体的には、医療テクノロジスト、システムエンジニア、公認会計士、企業アナリスト、F・P、ファンド・マネージャー、企業コンサルタントなどである。
彼らが携わる知識労働の共通する特徴を列挙すると、
① 個人中心で代替困難 (仕事と知識が 個人に結びついているので、他の人に代わるのが難し
い。)
② 年齢と無関係 (若い人でも 能力によって高い地位に就く。またかなり高齢でも仕事を継続
出来る。
③ 終身の自己学習が必須 (知識を更新する為に 常に勉強をしなくてはならない。)
④ 興味深い仕事である。
ということが挙げられる。いわば、「MAC1(アップル型)」とでも呼べるものである。
これに対して、マニュアル化された労働は いわば「MC2(マクドナルド型)」であり、自己学習不要
(マニュアル通りやればよい)、代替可能・比較的単調な仕事である。
知識労働者は高収入ではあるが、激しい競争があり、労働時間も長くなる。
労働時間に関して言えば、知識労働のそれは、必ずしも就業時間中に限るものだけではなく、帰宅後も仕事が可能であり、その結果、非常に長時間の労働をする事になる。
反対に、マニュアル労働は、比較的低収入であるが、労働時間は一定し、就業時間が終わればそこで、労働が終了する事になる。
知識労働者の共通点は、仕事が資格・免許を必要とする専門職であるということである。
現在そうでない職種であっても、次第に資格化されていく。専門領域の能力を維持する為に、常に
学習が必要になり、ひとたび専門職になっても気を許す事は出来ない。
学校教育だけでは足りず、継続教育によって知識を常に最新のモノに保つために、自己マネージメントが必要となる。
もう一つの特徴は知識労働者は、企業よりもその仕事(専門領域)に対してアイデンティティを持つ事である。
知識労働者には「仕事が大変である」という人はいるが、仕事が「必要悪」だという人はほとんどいない。経済的にその仕事をする必要がなくとも、生涯仕事を続けたい人たちである。
更に 日本では 1989年を分岐点にして、バブルの崩壊とグローバリゼーションにより、「年功序列制度」は破綻した。
そして、日本のサラリーマン層は 企業への帰属形態は大きな変化を余儀なくされた。
企業内はマニュアル労働の多くは 派遣社員に移管されるとともに、正社員として残った人々には、
① 組織のコアになれる能力、または ②一定の専門性 のどちらかが 要求されるようになっyた。
実力による キャリアパスの登場である。
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日本産業カウンセラー協会の月刊誌からの 第2回目の引用だが、内容的に「正鵠」を
得ているので、ほぼ主要な論文部分を全部転載させていただいた。
今後も、我々の主要な「情報源」として、特に産業政策・メンタル政策上、こまめに「ウオッチ」をしていくつもりです。
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